私たちが暮らす世界で起きている様々な社会問題を解決することを目的としたソーシャルビジネス。もともとは1980年代に海外で始まった取り組みですが、近年日本でも広がりを見せています。ですが、「ソーシャルビジネス」という言葉を聞いたことはあっても、具体的にはどのような事業を指すのかよくわからないという人も多いのではないでしょうか?
この記事では、ソーシャルビジネスを行っている国内外の企業・団体14社をまとめています。さらに、環境問題や貧困、子育てなど、様々な社会問題を解決するための具体的な活動や事例を紹介しています。
社会問題に関心がある方はもちろん、自社組織でソーシャルビジネスを検討している方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
※本ページに掲載するソーシャルビジネスを随時募集しています。ご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください!(無償ですが、掲載が保証されるわけではないことあらかじめご了承ください。)
目次
ソーシャルビジネスとは?
ソーシャルビジネスの意味
ソーシャルビジネスとは「社会問題の解決が目的のビジネス」のことを指します。一般的にはビジネスは企業利益を優先しますが、ソーシャルビジネスは企業よりも社会の利益を優先させます。
ソーシャルビジネスは、環境、貧困、子育て、高齢化、障がい、まちづくりなど様々な分野で求められています。これらの課題を解決するため、企業や地域住民、NPOなど様々な機関が協働していきます。具体的な解決策については、各企業の事例をご覧ください。
また、一般的に「社会的利益」というとボランティアを想像する方も多いでしょう。 ボランティアは寄付金等を運営資金としますが、ソーシャルビジネスは事業収益を得ることで、持続的な経営を目指します。
ソーシャルビジネスの3つの定義
ソーシャルビジネスに世界共通の定義はなく、国や提唱者によって細かな解釈は異なります。2008年4月に経済産業省が発表したソーシャルビジネス研究会報告書の中の「ソーシャルビジネスの定義」によると、ソーシャルビジネスの原則は次の3点です。
- 社会性
- 社会に今ある問題の改善を、事業活動の理念とすること
- 事業性
- ビジネスとして社会問題解決に取り組み、事業経営を継続させること
- 革新性
- 商品やサービスを新しく創り出したり、それらを社会に提供するための新しい仕組みを開発すること
- 事業の拡散を通し、新しい社会的価値を提供すること
これらの条件より、ソーシャルビジネスとは、社会問題をビジネスを通じて解決し、社会に対して新たな価値を提供することだと言えます。
出典元:経済産業省 ソーシャルビジネス
出典元:経済産業省 ソーシャルビジネス研究会報告書
【日本企業】ソーシャルビジネスの企業事例 注目度上昇中!の企業5選
ここでは、日本企業のソーシャルビジネスの注目度上昇中の事例を5社紹介します。
ジョッゴ株式会社(JOGGO)
ジョッゴ株式会社(JOGGO)は、オーダーメイドで革製品の受注販売を行う会社です。
バングラディシュの雇用創出、安心して暮らせる環境づくりを目的に設立されました。
自社工場をバングラディシュに持ち、現地の人々を雇用しています。未就学や障がいなどが理由で就労困難な人を優先的に採用。安定した給与の提供によって、貧困問題の解決を目指しています。
また、工場の職人をオーダーメイドの生産ができる革職人として育成し、誇りを持って働けることに力を入れています。
株式会社上向き(Soycle/ソイクル)
株式会社上向き(Soycle/ソイクル)は、発芽大豆を使った大豆ミート商品のブランドです。
エコフレンドリーな社会を創出することを目標に立ち上げられました。環境問題に食の切り口からアプローチすることを考え、大豆ミートに着目。多くの人に大豆ミートを採り入れてもらうことが環境負荷に繋がるという考えのもと、事業を展開しています。
大豆ミート商品の販売促進によって、温室効果ガスを削減し、水や穀物、農地などの環境資源を守ることを目指しています。
ピープルポート株式会社(ZERO PC)
ピープルポート株式会社(ZERO PC)は、地球環境保護を目指して開発・販売されているエシカルパソコンのメーカーです。
廃棄されたパソコンを再利用し、修理できるものはリーズナブルに再販売。使えなくなった部品もすべてリサイクルし、環境負荷ゼロを目指しています。
製造過程では、日本国内の難民雇用に力を入れています。不安定な生活を強いられる難民に、日本人と同水準の給料を目指しています。自社工場でパソコン再生の技術を身につけることで、スキルを持った人材として活躍できるようにしています。
株式会社ヘラルボニー
株式会社ヘラルボニーは、福祉を起点に新たな文化を創りだすことを目指す会社です。
「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、福祉とアート分野の融合に力を入れています。
日本全国の福祉施設や知的障がいを持つ作家とライセンス契約を結び、作家のアート作品を取り扱っています。作品はファッションやインテリアなどの分野で製品として使用し、その使用料を報酬として還元しています。
障がいを持つ人が正当な対価を得て、社会的地位を向上させることを目指しています。
ソーシャルグッドリンク
こちらでは弊社自身の取り組みを紹介します。
ソーシャルグッドリンクは、社会課題の解決を目的としたアフィリエイトASPです。
「社会を良くすること」を理念に、アフィリエイトを用いて商品・サービスを広める情報発信の支援に力を入れています。弊社は、社会を良くする事業を手がける広告主と、メディア運営を行う会員をつなぐプラットフォームです。双方のマッチングやシステムの安定稼働など、様々な活動のサポートをしています。
売上の1%は社会課題に取組む団体へ寄付を行い、より良い社会を作っていく輪を拡げるための活動に尽力しています。
【日本企業】ソーシャルビジネスの企業事例 大手5選
ここでは、日本企業のソーシャルビジネスのおすすめ事例を5社紹介します。
株式会社ボーダレス・ジャパン
株式会社ボーダレス・ジャパンは、「社会起業家の共同体」として起業家同士の協業や、起業家の育成支援を行う企業です。国内外の社会問題解決に取り組んでおり、1,000名を超える従業員の中の多くがバングラデシュ、ミャンマー等の発展途上国のスタッフです。
ボーダレス・ジャパンの事業分野は幅広く、日本を含む13の国で40以上の事業を行っています(2023年9月18日時点)。対象とする社会問題は、途上国の貧困問題、環境問題、障がい者雇用、教育など。具体的には、精神・発達障がい者が活躍できる工房の運営や、途上国の雇用創出、風力・太陽光発電などの事業を展開しています。
株式会社ユーグレナ
株式会社ユーグレナは、バングラデシュの栄養問題をきっかけとして、2005年に「人と地球を健康にする」という理念で設立されました。企業の柱は微細藻類ユーグレナ(和名・ミドリムシ)の活用。機能性食品やスキンケアの開発販売、ソーシャルビジネス、バイオ燃料、遺伝子解析の領域で事業を展開しています。
「ユーグレナGENKIプログラム」と称し、売上の一部を使用しバングラデシュの子供たちにユーグレナのクッキーを無償配布。栄養問題の解決に努めています。また、ノーベル平和賞受賞のムハマド・ユヌス博士が率いるグラミン・グループとともに、バングラデシュの農村地区の生活向上のための事業等に取り組んでいます。
株式会社マザーハウス
株式会社マザーハウスは、2006年にバングラデシュで設立されたファッションブランドです。「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念のもと、素材や職人のスキル、文化など、それぞれの地域の強みに着目した製品づくりを行っています。
商品の生産国はバングラデシュ、ネパールなど6か国。バッグやレザー製品、ジュエリーなどを生産しています。企業が目指すのは、働く方にとって「第二の家」と感じられる企業体制。給与や評価制度、年金や医療保険などの社会保障の充実に努めています。
そのほか、お買い物ポイントを利用した被災地支援も国内外で積極的に行っています。
株式会社LITALICO
株式会社LITALICOは、「障がいのない社会をつくる」を展望とする企業です。障がいを持つ方の生活をサポートし、社会にある障がいをなくすことで、様々な背景を持つすべての方が幸せになれる社会を目指します。
事業内容は、障がいのある方への就労支援やライフプラン設計、特性に合わせた教育プログラムや教室、障がい福祉分野の支援者の雇用促進などです。また、LITALICO研究所では、教育と仕事に関連する「障がい」について研究し、研究結果を障がい者支援の現場に提供しています。
認定NPOフローレンス
認定NPO法人フローレンスは、日本の子どもの支援活動を行うNPO法人です。
親子の笑顔をさまたげる社会問題を解決することを目標に、子ども・子育てに関する課題に取り組んでいます。
主な事業は、病児保育問題を解消するための訪問型病児保育の運営です。
他にも待機児童問題解消のための保育園運営や、乳児虐待死をゼロにするための特別養子縁組の支援などを展開しています。様々な課題解決のために、政策への提言や支援活動を行っています。
【海外企業】ソーシャルビジネスの企業事例4選
ここでは、海外企業のソーシャルビジネスのおすすめ事例を4社紹介します。
Grameen Bank(グラミン銀行)
Grameen Bank(グラミン銀行)は、バングラディシュにあるマイクロファイナンスを中心とした銀行です。創設者のムハマド・ユヌスは、ソーシャルビジネスという概念の提唱者でもあります。
1983年に創設され、主に農村部の貧困層向けに低利・無担保の少額融資を行っています。融資によって、人々を起業や就労に繋げることを支援し、貧困や生活困窮などの社会問題を解決することを目指しています。
世界40ヶ国以上で事業を展開し、途上国のみならず先進国でも貧困問題の解決に貢献。2006年にはその功績が認められ、ノーベル賞を受賞しています。
Company Shop Limited.(Company Shop)
Company Shop Limited.(Company Shop)は、創業50年以上の歴史を持つイギリスの再流通会社です。
貧困問題の解決を目指し、生活困窮者を支援するソーシャル・スーパーマーケットを運営。スーパーの利用は会員制となっており、店舗の近隣に住み、生活保護などの金銭的な援助を受けている人のみが利用できます。
賞味期限が近いものや、パッケージに難があるものを割引価格で販売することで、食品ロスの削減にも繋げています。
Safaricom Limited(サファリコム)
Safaricom Limited(サファリコム)は、ケニアにある携帯電話会社です。
2007年に、モバイルマネーサービス「M-PESA(エムペサ)」を開発・運営。携帯電話を使った金銭の支払いや受け取りを可能にしました。銀行が十分に普及しておらず、口座を持たないアフリカ各国の貧困層に広く支持されました。
現在エムペサは、ケニアの人々にとって生活に欠かせないインフラとなっています。テクノロジーが社会問題の解決に貢献した事例として評価を受けています。
Patagonia International Inc(パタゴニア)
Patagonia International Inc(パタゴニア)は、アメリカ発祥のメーカーです。登山・サーフィン・アウトドア用の衣料品などの製造販売を手がけています。
「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」という企業理念のもと、環境に配慮した商品を販売。リサイクルポリエステルやオーガニックコットン、人工セルロース系繊維を使用した商品などがその一例です。
労働問題にも力を入れています。商品の購入ごとに工場の労働者が賞与を得られる、「フェアトレード・サーティファイド」認証製品を多く販売しています。
まとめ
今回はソーシャルビジネスのおすすめ企業14選と、事業の具体的な事例を紹介しました。
ソーシャルビジネスは、社会問題の解決を目的としたビジネスです。貧困や環境問題、食糧問題、障がい福祉などの問題に、ビジネスを通して取り組みます。
また、ソーシャルビジネスは自社の利益よりも、社会的利益を優先させます。その一方で、ボランティアとは異なり、事業の収益化によるビジネスの継続も目指します。
今回ここに挙げた企業は、いずれも社会問題に対して独自のアプローチを行い、社会に対して新たな価値を提供している企業ばかりです。ソーシャルビジネスを支援したい、または自社組織でソーシャルビジネスを検討されている方は、ぜひ本記事の企業の事例を参考にソーシャルビジネスについて考えてみてください。